2025.01.31What's NEW
セルフコンパッション

「セルフコンパッション self-compassion」という言葉を最近よく目にするようになりました。
テクニークのレッスンにおいてもこの観点は非常に共感できるものですので、ここで少し紹介を。
セルフコンパッションとは、簡単に言うと、「自分を慈しむ」「自分を思いやる」ということ。困っている人、落胆している人を目の前にした時、寄り添い思いやる気持ちが湧くことがありますよね(この方がイメージしやすいかもしれません)。そんな思いやりの気持ちを、「自分自身に向ける」ということです。ボロボロで、どうしようもなく、弱り果てた自分であっても、ただ自分の現在の状況を素直に受け取り労わること。つまり、評価したり優越をつけたりといった感情を全て捨て、「今の自分」をそのまま受け入れ励ますこと。(これは自尊感情や甘やかしとは異なります)
メンタルヘルスの重要性に注目するようになった昨今では、病院・学校などでもこのセルフコンパッションの考えを取り入れているところが増えてきているようです。
一方、我々は常に良いものを求め、向上心を待ち、前進することを美徳としています。そう教育されてきたといっても過言ではないでしょう。ですから、常に自分自身に対して批判的で「こんなんじゃだめだ」「こんなはずじゃない」「もっとこうなるはずだ・・」といった考えに偏ってしまう傾向があります。これはある意味、非常に活力ある生き方であり、前向きな考え方でもありますが、現実の自分の状況を無視し否定することしかできない状況に陥りやすいとも言えます。
特に、からだ(身体、心)と向き合う場合には、これが足かせになることが多いように感じます。
レッスンにおいても、
「身体のこの部分が気になって仕方ない」
「どうしても上手く動けないんです」
「小さい頃からずっとこうなんです」
などなど、この考えから抜け出すことが難しいケースに多々出会います。
これから自分の使い方を見つめ直しながら、新しい使い方を学んでいくにもかかわらず、自分自身の身体・心を否定することばかりで頭が一杯になってしまっているのです。そして、「なんでこんなことになるんだ!!!」と、腹を立てて固執してしまう。
勿論、問題が生じているからレッスンを希望されるのですから、気になるのは当たり前なのですが、まずは今の現状を受け入れることが大切です。労わりと思いやりの気持ちで自分を観察することができると、今までシャットアウトしていた身体感覚は自然とオープンになり、精神的にも穏やかになっていきます。そうすると、自分の習慣的な動きや考え方に対して、新しい道筋を提供することができるようになるのです。
私はレッスンの中で、時折こんな風にお話しします。
「左脚ばかりで頑張って立ってたんですね。右脚にも意識を向けて愛でてあげましょう。右脚にも信頼を!」
「痛い膝はあなたに“まずい状況だよ!”と信号を送ってくれています。だから膝に“そうかそうかありがとうね”と労わってあげてください。」
「長年のこのやっかいな習慣にも理由があったんですよ。そんなに頑張らなくていいんだよって自由になる許可をあげてください。」
などなど
※「なんてしょもーない話を」と感じる方もいるかもしれませんが、大真面目な問いかけです!(笑)
そして同時に、
「気になる部分だけに注意を向けるのではなく、全身の使い方を整えていくことを優先的に考えていきましょう」
と。
また、プライマリーコントロール(首と頭と背中の関係性)について学びながら、「首を硬くしない・・・」と問いかける時に、優しく労わる気持ちで自分自身に問いかけてくださいと話します。
「首は硬直しないでね~」
「頭は前と上の方向を目指そうね~」
「背中はゆったりと長く~広く~」
強い命令口調だと自己否定を含む命令になり、逆に身体が硬直し上手く動けなくなるからです。
私もテクニークを指導し始めた20年前は、この「思いやり」の考えがこれほど重要だとは思っていませんでしたが、様々なケースと出会う中で、セルフコンパッションの意識があるかないかで大きな違いが生まれることに気づいていきました。
物事に対し、無理やり強制的に変化を起こそうとすると上手くいきません。
まず現状を受け入れること(批判したりするのでなく)が第1歩となるのです。
アレクサンダーテクニークは「動きの教育」でもあり、「物事の考え方、捉え方の教育」でもあるといつも考えています。心と身体は統一体です。互いに影響し合い、支え合っているからこそ、このような考えが重要になってくるのでしょう。
「自分自身を思いやるなんて・・?どういうこと??」と思っている方、
ぜひぜひ心の片隅に置いておいてくださいね。
日常生活においても
アレクサンダーテクニークを学ぶ上でも
とても重要な観点だと思いますよ!
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